VOYAGER

片岡義男.com 全著作電子化計画

MENU

評論・エッセイ

映画の中の昭和30年代 『杏っ子』

売れている小説家である平山平四郎の長女の杏子と、小説家志望で定職が続かない夫の亮吉の夫婦によるギスギスした関係を中心に描かれる映画『杏っ子』は1958年に公開された。片岡義男は、この映画を分からないと言い、「ここまで書いてきた成瀬作品の中で、これが僕にとってはもっとも奇妙な作品だ」と書く。だからこそ、片岡はこの作品を深く掘り下げて、自分なりの見方を探そうとする、その過程が、そのまま映画評になっているという不思議な構成がなんとも面白い。しかも、その中で小説家の平四郎が作中で発する言葉をいくつも引用し「世間とはほとんど関係を持っていない人…

底本:『映画の中の昭和30年代──成瀬巳喜男が描いたあの時代と生活』草思社 二〇〇七年

このエントリーをはてなブックマークに追加