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評論・エッセイ

映画の中の昭和30年代 『流れる』

『流れる』は、山田五十鈴。高峰秀子。田中絹代。栗島すみ子。岡田茉莉子。杉村春子という豪華な女優陣による、借金を抱えた芸者置屋を中心に流れる時間を捉えた映画だ。片岡義男は「なにをどうしたい映画なのかよく分からない出来ばえ」と書くが、「それを成瀬巳喜男が撮るなら成瀬の映画が出来あがる」のも確かだと言う。その成瀬の映画とはどういうものかについて、片岡は映画の舞台となる1956年の日本という時代に注目した。中古智のセットと岩田専太郎による着物の監修が作り出した映画の世界の中に、片岡は今は失われた風俗や生活、言葉や仕草を指摘して、日本の近代史の…

底本:『映画の中の昭和30年代──成瀬巳喜男が描いたあの時代と生活』草思社 二〇〇七年

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