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評論・エッセイ

映画の中の昭和30年代 『驟雨』

五十年遅れの観客として、1956年の映画『驟雨』を見た片岡義男は、その時間分、多様な切り口で映画に触れることができると言う。だからこそ、この映画を平凡な夫婦を描いた作品ではなく「結婚を困難にさせる要因が既にできあがっている現実」の中で答えのない答えを探す物語だと喝破する。この評論の中で資料を引用しながら、成瀬巳喜男は自分がよく知っている町を舞台にしたがるようだと書き、映画の中の東京に自分の思い出を重ねる片岡義男もまた、東京西部の私鉄沿線を好んで短編小説の舞台にすることが多い。そういう片岡義男の目だから、成瀬巳喜男の映画の中に入り込んで…

底本:『映画の中の昭和30年代──成瀬巳喜男が描いたあの時代と生活』草思社 二〇〇七年

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