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評論・エッセイ

映画の中の昭和30年代 『浮雲』

真珠湾攻撃の少し前にフランス領インドシナのダラットで、農林省の役人と役所に雇われたタイピストとして、富岡とゆき子は出会い恋人同士となる。敗戦後、妻の元に戻る富岡と、彼を追って帰国するゆき子の戦後の半年ほどを描いた『浮雲』は、片岡義男の目には、かなり奇妙な恋愛劇として映っている。林芙美子の原作によるシナリオに書かれたセリフを大量に引用しながら、富岡とゆき子の関係を検討し、ただただ、ゆき子に追われ、なじられ続ける富岡は何をしているのか、そして、ゆき子という女性はどういう存在なのかについて、主に富岡という男性の冷静さを軸に考察する。成瀬巳喜…

底本:『映画の中の昭和30年代──成瀬巳喜男が描いたあの時代と生活』草思社 二〇〇七年

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