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評論・エッセイ

映画の中の昭和30年代 『晩菊』

1954年6月に公開された『晩菊』は、片岡義男に言わせるとあまり成功した作品とは言えないらしい。戦前には芸者をやっていた四人の女性たちの戦後を描いた、この映画の物語を人物の動きを中心に詳細に検討する片岡義男の手つきは、映画を見るという行為の意味を私たちに教えているようだ。その一方で、描写される1954年の生活のディテールを細かく拾って、言葉で説明していく。「ラジオ」と言えば、それだけでその形状のイメージが共有できた時代、ネジ式の玄関の鍵、戸を叩く音、火鉢の灰の様子など、失われた昭和の生活を懐かしむのではなく、そういう時代であったという…

底本:『映画の中の昭和30年代──成瀬巳喜男が描いたあの時代と生活』草思社 二〇〇七年

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