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評論・エッセイ

映画の中の昭和30年代 『夫婦』

生活空間としての「町」から離れるという発想すらない状況と、離れたくても離れられない経済事情が庶民生活の基盤として描かれた『銀座化粧』から『おかあさん』。そして、若い女性の独立の手段としての引越しが描かれた『稲妻』に続いて、『夫婦』では、引越した先でのドラマが描かれていることに注目したい。そこには既に現代と地続きの東京があり、大晦日には終日電車が走っている。そんな1953年の冬に片岡義男が見るのは、火鉢を挟んで過ごすクリスマスと大晦日の情景。世相は、女性が自由に動くことができるようになりつつも、未だ縛られる要素は多く、その中で、女性の幸…

底本:『映画の中の昭和30年代──成瀬巳喜男が描いたあの時代と生活』草思社 二〇〇七年

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