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評論・エッセイ

『ジャンケン娘』一九五五年(昭和三十年)

 ジャンケン娘とはいったいなにだろう、と僕は考えた。娘がジャンケンをする映画でもなさそうだ。そして娘とは、この場合は、美空ひばりと江利チエミ、そして雪村いづみの三人のことだ。彼女たち三人がジャンケン娘とはこれいかに、と考えているとやがてわかって来た。ジャンケンとは、石、紙、鋏の三者だ。ひばり、チエミ、いづみの三人は、グー、チョキ、パーに相当する。どれもが他のどちらをも補完し合うことで、三人はさながらジャンケンのように成立している。ジャンケン娘とはそういうことのようだ。
 一九五五年の彼女たちは十八歳だった。ひばりとチエミは…

初出:『映画を書く──日本映画の謎を解く』ハローケイエンターテインメント 一九九六年
底本:『映画を書く──日本映画の原風景』文春文庫 二〇〇一年

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