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評論・エッセイ

『月よりの使者』一九五四年(昭和二十九年)

 肺結核となった弘田進という青年は、信州の高原にある療養所に入って療養する。大学は出ていると仮定して、療養所に入るときの年齢は二十二歳から二十四歳ぐらいだろう。療養所に入るとは言っても、一週間や十日ではない。二年近くはかかるのだろうか。療養のかいあって彼は肺結核を克服する。退院出来ることになり、その日が近づいて来る。このときの彼の年齢は、二十五、六歳だろう。
 野々宮道子という美人で独身の看護婦が、優しく丁寧に、親身になって看護をしてくれた。弘田は画家を志している青年と相部屋だった。環境のいい高原の療養所で食べるべきものを…

初出:『映画を書く──日本映画の謎を解く』ハローケイエンターテインメント 一九九六年
底本:『映画を書く──日本映画の原風景』文春文庫 二〇〇一年

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