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評論・エッセイ

『ハワイの夜』一九五三年(昭和二十八年)『雲ながるる果てに』

『夜来香』で監督とシナリオを共作したのとおなじ脚本家が、この『ハワイの夜』の脚本を担当している。おなじ思考経路をへて作った、おなじような時間枠のなかでの、おなじような展開と意味のドラマだ。
 すべて終わったあとの戦後のハワイ、つまりこの映画の公開時という現在のなかから、映画は始まる。ある日の昼間、ホノルルの教会の前だ。尼僧の黒い服を身にまとった若い女性が歩いている。岸恵子が演じている、ジーンという日系女性だ。彼女を見かけて、友人が駆け寄って来る。ふたりは芝生の上にすわり、話をする。あの人をいまも思って過去に生きているあなた…

初出:『映画を書く──日本映画の謎を解く』ハローケイエンターテインメント 一九九六年
底本:『映画を書く──日本映画の原風景』文春文庫 二〇〇一年

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