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評論・エッセイ

銀座カンカン娘

 戦後、という時代。数多くの写真によって構成された、『激動の昭和史』とか『一億人の昭和』といったタイトルのシリーズ本のうちの、『敗戦、そして戦後の復興』などというタイトルの巻が、主題としている時代。その時代の進行のなかで、僕は幼時を脱していき、やがてひとりで町を歩く子供となった。その町で、とにかく何度も聴いたのは、「銀座カンカン娘」という歌だった。
 不思議な歌だという感想を、子供心に僕は持った。その感想はいまも変わらない。不思議であると同時に、その歌は相当にロマンティックだ。あの頃の、あの町の様子、そしてそこにいた人たち…

底本:『音楽を聴く』(第三部「戦後の日本人はいろんなものを捨てた 歌謡曲とともに、純情も捨てた」)東京書籍 一九九八年

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