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評論・エッセイ

遠い日々からの歌

『グランド・ピアノで奏でる石原裕次郎の世界』というタイトルのカセット・テープを聴きながら、僕は歌詞カードの歌詞を目で追っていった。A、B両面で合計十四曲の、石原裕次郎が歌って有名になった歌を、僕はそのようにして聴いた。裕次郎自身が、あるいは他の歌手が歌うのを聴くのとは、また違った趣があって楽しい体験だった。
 これらの歌を、僕はいまになって初めて、正式に聴いた。これらの歌がヒットしていた時代を僕は知っているが、こういう歌の世界からは存分に遠かった。断片的にいろんな場所で耳にはしているけれど、歌詞を追いながら十四曲も、きちん…

初出:『月刊オーパス』一九九四年七月号
底本:『音楽を聴く』(第三部「戦後の日本人はいろんなものを捨てた 歌謡曲とともに、純情も捨てた」)東京書籍 一九九八年

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