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片岡義男.com 全著作電子化計画

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評論・エッセイ

朝食は文化だ。そしてその文化は、他の文化を排除する

 もはや嫌いになることもなければ、飽きることもない、そして不味いとも思うこともない、すっかり慣れ親しんだ食事、というものが誰にでもある。心理的にも生理的にも、完全に慣れ親しんだ、なんら違和感のない食事だ。人の心理も生理も、すべて文化の産物だ。あるひとつの国のなかで、長い時間をかけた果てに、その文化の深い部分と分かちがたく結びついている、ごく一般的な、最大公約数的な食事。そのような食事が、毎日ほとんどなんの苦労もなく手に入っているうちはいいけれど、たとえば自分の国の外に出て、慣れた食事が手に入らなくなったら、人によって程度の差はあるにし…

底本:『シヴォレーで新聞配達──雑誌広告で読むアメリカ』研究社出版 一九九一年

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