VOYAGER

片岡義男.com 全著作電子化計画

MENU

評論・エッセイ

二階にいる赤ちゃんの泣き声を無線受信機のスピーカーから聞く

 この広告をぱっとひと目見て、なんの広告だかわかるだろうか。わからなくてもいっこうにかまわないけれど、僕の場合は、雑誌のページをくっていてこの広告が目にとまったとたん、ある種の感銘を強く受け、つくづく、しみじみ、この広告を鑑賞した。
 二階の寝室にある囲いのついたベッドに寝かせてある赤ちゃんの、無線によるモニターだ。発信機のプラグを壁のアウトレットに差し込み、スイッチをオンにしておく。受信機のほうは、たとえば広告のなかにある写真のように、夫婦が夕食をとるテーブルに置いておく。赤ちゃんが泣けば、その声は無線によって母親や父親…

底本:『シヴォレーで新聞配達──雑誌広告で読むアメリカ』研究社出版 一九九一年

このエントリーをはてなブックマークに追加