日常そのものである一本のジーンズが、広告のなかで脱日常に変わるとき
この広告は、リーという銘柄の、よく知られたジーンズの広告だ。リーという名前やそのジーンズを僕は子供の頃から知っているが、かつては無骨なジーンズやおなじく無骨な作業衣のメーカーであり、レジャー・ウエアもまた無骨なものだったが、いまではこんな広告を雑誌に載せるようになった。あのリーがこんなふうになろうとは。
こんなふうに、と僕が言うとき、その驚きは、この広告を支配しているイメージ性にむけられている。広告主がリーだからよけいにそう思うのかもしれないが、なんというイメージ広告であることか。
リーのジーンズという、…
底本:『シヴォレーで新聞配達──雑誌広告で読むアメリカ』研究社出版 一九九一年