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片岡義男.com 全著作電子化計画

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評論・エッセイ

ダヴ・バーを一本手に持ち、たったいま、ひと口嚙みとって食べた

 美人が右手に持っているダヴ・バーは、ひと口だけ嚙んである。彼女自身が食べた、という設定なのだろう。そして、彼女が左手に持っている、ダヴ・バーの三本入った箱に描いてあるダヴ・バーも、三本のうち左側の一本は、ひと口だけ嚙みとってある。
 どちらの場合も、嚙みとってない完全なものの場合よりも、見た目においしそうに見える。あ、食べたい、という気持ちを、この広告を見る人の心のなかに引き起こす。
 彼女は、日常的に接してたいへんに感じのいい美人、という設定の人だとぼくは思う。なんら特別なところはないけれど、いつも潑剌とし…

底本:『シヴォレーで新聞配達──雑誌広告で読むアメリカ』研究社出版 一九九一年

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