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評論・エッセイ

一本の万年筆。失われた品位への、回帰の願望

 これはパーカー万年筆の広告だ。一般大衆誌からはやや距離をとった、趣味のいい高級な雑誌、とされている雑誌で、このところよく見かける。
 一九二七年にはアメリカで発売されていた、デュオフォルドというモデルの万年筆の復刻だそうだ。パーカー万年筆がやがて百周年をむかえるので、それを記念してのことだという。
 この広告の上部にある写真は、一九二五年のヒスパーノ・スーザという自動車の前部だ。その前輪のフェンダーの上に、デュオフォルドが一本、横たえてある。
「昔のような車がなくなったのも、よくわかりますよ。万年…

底本:『シヴォレーで新聞配達──雑誌広告で読むアメリカ』研究社出版 一九九一年

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