自分で自動車を買わなくてはいけなくなったら、ぼくはまず最初に、ステーション・ワゴンを買うはずだ。このことは、かなりはっきりしている。最新鋭の二座席のスポーツ・タイプをはじめに買うことはあり得ないし、フル・サイズをさらにうわまわるセダンを買うことも、おなじくあり得ない。まずはとにかく、一台のステーション・ワゴンをぼくは買う。
　まずはとにかく一台のステーション・ワゴンだ、と思うこのぼくの気持ちは、とにかく自動車は実用的にこてんぱんに使いたい、という気持ちとつながっている。こてんぱんに使うとはどういうことかというと、自動車と…

底本：『きみを愛するトースト』角川文庫　一九八九年