VOYAGER

片岡義男.com 全著作電子化計画

MENU

評論・エッセイ

黄昏どきの町はウイスキーを求める

 一九六〇年代のなかば、アメリカのバーでシーグラムのセヴン・クラウンを注文するとき、いろんな注文のしかたがあった。「ザ・シュア・ワンをくれ」という言いかたは、そのうちのひとつだ。確実なやつ、自信のあるやつ、といったほどの意味だが、これはセヴン・クラウンとおなじく7の字をその名前のなかに持っている、有名な清涼飲料水で割ったものを意味することが多かった。割らずに「ロックにしますか」ときくバーテンダーと、「割りますか」ときいてくるバーテンダーと、ふたとおりあった。割る、という言葉は英語だと、ミックスという言いかたになる。
 大人…

底本:『きみを愛するトースト』角川文庫 一九八九年

このエントリーをはてなブックマークに追加