夜遅く、ジャズのLPを捜してみる
冬のよく晴れた日の午後、湖のほとりにあるリゾート・ホテルのコーヒー・ショップにいるとする。仲よしのグループ何人かと、いっしょだ。なかば遊びのような、なかば仕事のような時間を、そこで過ごしている。
コーヒーが思いのほかおいしい。湖が見渡せる。BGMが聞こえてくる。情けないBGMだ。馬鹿学生がアルバイトに編曲したようなBGMだ。もとの曲がたとえばカントリー・アンド・ウエスタンの名曲だったりすると、数多くのすぐれた歌手による、その名曲の名唱や絶唱の数々が浮かんできて、なおさら情けない気持ちとなる。
いい音楽を聴…
底本:『きみを愛するトースト』角川文庫 一九八九年
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