VOYAGER

片岡義男.com 全著作電子化計画

MENU

評論・エッセイ

RとLと日本人

 あるところで部屋に入ったら、片隅のTVがオンになっていた。ぼくがふとそのTVに視線をむけると、ひとつのCMがはじまった。
 モノクローム写真による街角の風俗描写のようなスナップが、ワン・ショットずつ画面に出てきた。一九六〇年代の東京だということは、すぐにわかる。出るぞ、出るぞ、と思っていたら、案の定、出た。ビートルズだ。
 日本人の若い男性が歌う『ミスタ・ムーンライト』が、画面に重なる。一九六〇年代に連想ゲーム的にビートルズが結びつくのだろう。これだけでもすでに能のないCMだが、このCMのなかの『ミスタ・ムー…

底本:『きみを愛するトースト』角川文庫 一九八九年

このエントリーをはてなブックマークに追加