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評論・エッセイ

不思議なパズルのような本だった

 ぼくの父親は、ハワイで生まれてアメリカで育った日系の二世でした。じっとしているところを見ているかぎりでは日本の人のようなのですが、いったん動いたり口をきいたりすると、もののみごとにアメリカの人であるという、きわめて二世らしい二世です。
 彼は、日本語がすこしわかるのですが、息子であるぼくにとって、父親の日本語の能力がどの程度まであるのか、ついに正確にはわからないままですから、日常の用はなんとか足せても、ほんとの意味での日本語の能力はほとんどなかったのではないかと、ぼくは思っています。
 ですから、父親はぼくに…

底本:『きみを愛するトースト』角川文庫 一九八九年

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