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評論・エッセイ

中学生にはなったけれど

 ぼくは中学生のとき転校を三度、体験している。ひょっとしたら、四度だったかもしれない。はっきり記憶していない。いちばんはじめの中学校のことは、いまでもかなり鮮明に覚えている。
 いちおう卒業だけは果たした小学校のすぐ近くに、その中学校はあった。瀬戸内海をちょうどいい距離そしてまさに適正な角度から見下ろす高台に、校舎は建っていた。
 自宅から通うためのルートは、いくつかあった。そのうちの、もっとも普通のルートを歩いていくと、途中までは小学校へいくときのルートとおなじだった。途中で分かれるその分岐点を歩くとき、中学…

底本:『きみを愛するトースト』角川文庫 一九八九年

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