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評論・エッセイ

ワルツ・モデラート

 現実のぼくではない、架空のぼくには、いま三人の女性がいる。どの人も、たいへんに素敵だ。美しい。頭がいい。ユーモアのセンスに満ちている。けちではない。優しい。そして、きわめて厳しい。その三人をめぐる物語を、核心の部分だけ、できるだけ短く、これからここに書いてみようと、ぼくは思う。
 その三人を、A、B、Cとしてもいいのだが、それではいささか風情に欠けるので、ここでは仮に、ケイコ、ミツコ、そしてサチエとしてみよう。この三人をめぐる物語にとって、もっとも重要なのは、ひとつの曲だ。この曲には歌詞がついているから、歌と言ってもいい…

底本:『きみを愛するトースト』角川文庫 一九八九年

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