VOYAGER

片岡義男.com 全著作電子化計画

MENU

評論・エッセイ

『歌謡曲が聴こえる』 まえがき

 一万四千分の一の都市地図というシリーズのうちの一枚を参照しながら、PCのモニターにあらわれるストリート・ヴューのなかを僕は移動していく。視点はおそらくいまの僕の目の位置とおなじなのだろう。その目はその位置で空中を漂うかのように動いていく。JR岩国駅の周辺のヴューのなかを僕は歩いてみる。まったく見覚えのない光景ばかりだ。当然だよ、と言っていいのかどうか。僕が最初にこのあたりの光景を目にしてから、七十年近くが経過している。その後六十数年間、僕は一度もここへいっていない。街と言えばこのあたりだったのだが。そしてそこを僕はしばしば訪れていた…

底本:『歌謡曲が聴こえる』新潮新書 二〇一四年

このエントリーをはてなブックマークに追加