VOYAGER

片岡義男.com 全著作電子化計画

MENU

評論・エッセイ

片岡義男の私と小田急 見合い写真の季節

 僕がまだ大学生だった頃、たしか1年生を終えて2年生になる直前、3月の初め、ある快晴の日の午後。その日が土曜日だったのは、なぜかいまでも覚えている。小田急線の世田谷代田駅の改札口で、近所に住んでいたおなじような年齢の女性と、偶然いっしょになった。用事があって新宿まで行くという。僕もそうだった。だからふたりで上りのホームへいき、ベンチにならんで座った。
 お見合いをしなくてはいけなくなった、という話を彼女は始めた。あいだに入っている人に自分の写真を託さなくてはいけない。顔の写真はこれでいいかしらと、バッグから社員証を取り出し…

『おだきゅう』二〇〇二年二月号

このエントリーをはてなブックマークに追加