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評論・エッセイ

片岡義男の私と小田急 ロマンスカーが誘惑する

 ロマンスカーという電車が走り始めたのは、僕がまだ子供の頃のことだった。初めのうちはオルゴールを鳴らして走っていた。駅から7、8分のところにあった僕の自宅から、その音がよく聞こえた。夏のロマンスカーは納涼ビール電車となった。駅に貼ってあったポスターを見て、納涼ビール電車とはいったいなんなのか、子供の僕が頭をひねったのを、いまの僕がまだ覚えている。
 新宿から帰るときにロマンスカーに乗るようになって、10年は過ぎたと思う。新宿に出るときも、気が向けばロマンスカーだ。散歩にも愛用している。町田から乗ると、小田原あるいは箱根湯本…

『おだきゅう』二〇〇一年十一月号

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