片岡義男の私と小田急「再会を待つ」
ホノルルの空港で僕がイミグレーションを出るとほぼ同時に、隣の列で手続きを済ませた日本人の中年男性が、笑顔で僕に歩み寄り、「失礼ですけど、カタオカさんですよね」と言った。
はい、そうです、と答えた僕に、
「やっぱりそうだ。実は私は、東京ではいつも小田急線に乗ってるんですよ。自宅がいまは成城にあって。電車のなかで、ときどきお見かけしてたんです。声をかけたいけど、ずっとためらってて。外国だと勇気が出るのかなあ。昔からカタオカさんのファンでした」
そう言った彼は一段と笑顔を豊かにし、僕に向けて右手を差…
『おだきゅう』二〇〇一年九月号
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