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評論・エッセイ

『ヒロ・マーチ』は遺伝する

 僕がまだ十歳になったかならないかの頃、記憶によれば真夏の日曜日の午後、たまたまかかっていたラジオで、僕はハワイ音楽の番組を聴いた。ハワイからの実況中継だったから、『ハワイ・コールズ』という番組であったことは、まず間違いない。放送していたのは当時の占領米軍だ。
 なんとなく聴いていた僕の気持ちを、ひときわ強くとらえた曲があった。歌はなく演奏だけだった。演奏が終わると、そばにいた父親が、「いまのはヒロ・マーチという曲だよ」と言った。初めて聴いてほとんど覚えてしまったほどに、僕はその曲を好きになった。
 それから数…

底本:『坊やはこうして作家になる』水魚書房 二〇〇〇年

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