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片岡義男.com 全著作電子化計画

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評論・エッセイ

ホテルの部屋の写真

 ホテルの部屋はきわめて人工的な空間だ。ホテルという大きな建物のなかに、機能としてはまったくおなじ、そして造りとしては似たような部屋がたくさんあり、そのなかのひとつが、僕なら僕にとっての、ホテルの部屋だ。
 人間の人工性がホテルの部屋にそのままあらわれている。一夜を過ごすとき、人間は野原にごろっと寝るわけにはいかないのだ。泊まって一夜を過ごすという基本軸を中心に、必要最小限を旨として、ホテルの部屋は整えられている。一夜を過ごすという基本の周辺に、ひとりで過ごす、あるいは何人かで個人的に過ごす、という使いかたが広がっている。…

底本:『坊やはこうして作家になる』水魚書房 二〇〇〇年

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