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評論・エッセイ

なにかひと言

 ひと言主義とも言うべき傾向が、日本人にはあるようだ。相当に顕著な傾向ではないだろうか。なにかひと言、と相手からひと言を引き出したがる人は多い。ひと言とは、そのときその場での主観の働きにもとづいた、ほとんどなんの準備もない文字どおりひと言による、総まとめのような短い言葉だ。
 ぜんたいを正確に俯瞰した結果の、冷静で客観的な言葉ではなく、その場の閃きでぱっとひとつかみにして相手にあたえるごく短い言葉は、短くはあっても含みのある言葉でなくてはならない。いかにも含みのありそうな言葉でなくてはいけない、と言い換えておこうか。受けと…

底本:『坊やはこうして作家になる』水魚書房 二〇〇〇年

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