五年かけて作る飛行機
ロッキードC–130という輸送機の胴体に、僕は手を触れたことがある。滑走路にただ存在しているだけで、その様子はすさまじい容積感と重量感だ。爆撃機に重爆撃機という言いかたがあるなら、この輸送機は文句なしに重輸送機だ。愛称はハーキュリーズという。日本語だとヘラクレスだ。
絶大な信頼を寄せることを当然の前提として許容する、途方もない力持ちの、誠実さをきわめた働き者、という印象を誰にもあたえる輸送機だ。僕がこの輸送機の胴体に手を触れた五月の晴天の日、はるか頭上に仰ぐ操縦席の窓ガラスの内側には、華やいだ金髪の女性パイロットが見え…
底本:『坊やはこうして作家になる』水魚書房 二〇〇〇年
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