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評論・エッセイ

僕は明治十五年には人力車の車夫だった

 一八五三年に生まれて一九三五年に八十一歳で他界した、ウーグ・クラフトというフランス人男性は、一八八二年、世界旅行の途中で、明治十五年の日本を訪れた。シャンパーニュ地方のランスで生まれた彼は、いまもシャンパンにその名を残す、シャンパン財閥の長男だった。
 一八六七年と一八七八年に、パリで万国博覧会が開催された。そして一八七三年には、ウイーンで万国博覧会が開かれた。万国博覧会とは、世界を見るための窓だった。その窓から見えたもののひとつに、当時のヨーロッパで盛んだった、ジャポニズムというものがあった。ウーグ・クラフトは、少年期…

底本:『坊やはこうして作家になる』水魚書房 二〇〇〇年

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