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評論・エッセイ

子供は遊んだ

 学校へいかないと一日は長かった。特に小学校の低学年の頃は、そうだった。まだ幼い。行動の範囲は限られている。長い一日を遊んで過ごすとしても、遊びのために思いつくことの範囲は、まだ広くはない。しかも同年齢の友人たちは、全員が学校の教室のなかだ。たまたま相手にしてくれる大人がいるとき以外は、原則としてひとり遊びの時間が続く。
 歩くのはたいへんいい、とその頃に僕は発見した。僕の歩くペースと、時間そのものが経過していく速度とが、質的に合致するときがあった。そのようなとき、子供の感覚はその全身から周囲に向けてのびていき、のびたどこ…

底本:『坊やはこうして作家になる』水魚書房 二〇〇〇年

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