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評論・エッセイ

本場の英語とはどこの英語なのか

 英語がペラペラと言うとき、そのペラペラさは、いかにも本場のもののように聞こえる流暢さだ。そして本場とは、戦後にかぎるなら、アメリカをおいてほかになかった。戦後五十数年が経過した現在でも、このことにほとんど変化はない。流暢な英語はすなわち本場の英語であり、本場にはイギリスもあるけれど、自分たちにとっては圧倒的にアメリカであるという図式が、日本人の頭のなかに強力に出来上がっている。
 戦後まもなくの文脈でなら、英語の本場はアメリカという短絡した反応も、わからないではない。しかし、世界じゅういたるところで、すさまじい量の多種多…

底本:『日本語で生きるとは』筑摩書房 一九九九年

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