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評論・エッセイ

移民の子の旅 10 ハワイアン・パラダイス

 スチール・ギターの音が、なんとも言えない。頰をかすめて吹きぬけていく貿易風のようだ。甘い香りがする。残響のなかに、音がスラーになっていくその上昇や下降のなかに、青い空が見える。海が見えてくる。
 現実にハワイで陽に照らされている野原や海は、スチール・ギターの演奏が聞き手の心のなかにかきおこすイマジネーションを遠く超えて力強く、どこから手をつけていいのかわからないほどに分厚く広く、そして猛々しくさえある。
 だのに、それを知っていても、スチール・ギターが鳴りはじめると、イマジネーションの産物としてのハワイのなか…

『ミステリマガジン』一九七六年五月号

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