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評論・エッセイ

私は写真機

曇った日の僕は現実の中に取り込まれた。僕はその現実の中でいつのまにか消滅していた。晴れた日の僕は消滅せず、少なくとも視点だけは外にあり、その視点を持ち続けた。受けとめ続ける世界はリアリティの連続だ。カメラのレンズを通過した光は物体を絡め捕ってリアリティへと急速に変化させつつ、それをフィルムの乳剤層の中に閉じ込める。そして現像によってリアリティは確定される。撮るか撮らないかは、気づくか気づかないかであり、気づくとは、自分が写真機になることだ。

底本:『私は写真機』岩波書店 二〇一四年

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