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小説

七月の水玉だった

高校三年生のヨシオは、その年の五月に隣家の庭と接する部分に境界のように作られた竹垣を取り外すように両家の父親から頼まれる。梅雨になって、その庭の中央に立つ隣家の娘、扶美子と言葉を交わし、そこから二つ年上の彼女との淡い、姉と弟のような交流が始まっていく。年上の彼女に対する思慕の情に彼自身が気づく頃、彼女の一家は引っ越すことになり、彼女はヨシオに強烈な思い出を残して去っていく。淡い、しかし強い性欲も伴う感情に向き合いつつ、その気持ちは、ひとつの方向を見出していく。これは、作家が生まれる瞬間の物語でもある。

底本:『七月の水玉』文藝春秋 二〇〇二年六月
初出:「文學界」 二〇〇一年七月号

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