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評論・エッセイ

リンゴの樹の下で、マーモットが待っている

特別にかたちのよい樹ではない。だがやはり堂々としている。幹は大人でもひとかかえにはできない太さだ。ずんぐりと太く、すこしかしいでいるその幹から五本の枝が分かれている。夏の陽が頭上にあるときには、地面に大きな影ができる。樹齢七十二年になる、リンゴの樹だ。

底本:『町からはじめて、旅へ』晶文社 二〇一五年改版(一九七六年初版)
初出:『シティロード』一九七六年二月号

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