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評論・エッセイ

メロドラマ

「乾杯」と、ぼくが言った。微笑して、彼女もグラスをかかげた。気のせいかもしれないが多少ともぎこちなく、ぼくたちはグラスの縁をあわせた。ぼくはすぐにドライ・ジンの炭酸水割りに唇をつけたのだが、彼女は、手に持ったグラスのなかを見ていた。「なんのために?」と、彼女が言った。「え?」「なんのために?」——

底本:『ターザンが教えてくれた』角川文庫 一九八二年

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