球場の書店に寄る 10 スピードと均衡
レナード・コペットの『頭を使うファンのための新たな野球案内』(1991)は、野球のインナー・メカニズムを巧みに語った本だ。著者は野球ルールの進化の歴史の核心にあるのはスピードだという。スピードがあればゲームの展開は速くてエキサイティングになり、必要とされる運動能力の発揮と維持を行うプロの選手が出現し、専用の球場ができ観客が集まる。それはビジネスであり、マネーやエコノミックスとしてのベースボールが成立していく。そして攻守双方が彼らを支配するルールの中で完璧に均衡しなければいけない、という点に最も注意が払われたという。
底本:『ミステリマガジン』二〇〇四年十月号