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書評

球場の書店に寄る 9 ザ・ネクスト・ピッチというアート

1988年のワールド・シリーズでドジャーズはアスレティックスを4勝1敗で下した。この時のドジャースの投手、オレル・ハーシュハイザーのシーズン成績は二十三勝八敗という驚くべきものだった。彼の著書『アウト・オブ・ブルー』(1989)を読むと、彼にとって投球とは常にその一球であり、その一球とは、いままさに現在となろうとしている、投げる直前の、その意味ではまだ未来のものである一球であることがわかる。どの試合の、どんな状況であっても投げるのは常の次の1球なのだ。ここに彼の投球に関する哲学のすべてがある。

底本:『ミステリマガジン』二〇〇四年九月号

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