前回『美術館の庭でひとめ惚れ』のラストシーンを受けて、今回はノンフィクション作家の高倉健二が、かつて『うしろ姿の恋人たち』に登場した女性の後ろ姿を撮って投稿する男を高倉に紹介した投稿雑誌の編集者島村に、またしても読者から送られてきた写真を見せてもらうところから始まります。その60枚の写真は全て同じモチーフながら変化があり、素晴らしい写真なのですが、多分、日本では出版できないであろう作品群です。物語は、商業写真に於ける幻想に続いて、写真という表現が作り出す幻想そのものの考察へと進んでいきます。
底本:『MEN’S EX』一九九五年四月号