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小説

撮られた人の行方 9 アロマティス・オ・サクラ

写真がどのように撮られたのか、その技術論も読みどころの片岡義男ならではの異色作です。

 前回の最後で、レズビアン小説を書きつつある村崎久美子に渡された、彼女の人生の分岐点になってしまった写真についての描写が、今回のストーリーの全てと言ってもよいでしょう。「撮られた人の行方」第三回『美人秘書とボディ・ビルディング』で久美子がノンフィクション作家の高倉健二に話した女性を久美子が撮ったその写真は、性的でありながら性別を超え、芸術的でありながら猥雑であり、高倉に強い衝撃を与えます。久美子との会話による、その写真がどのように撮られたのか、その技術論も読みどころの片岡義男ならではの異色作です。

底本:『MEN’S EX』一九九五年二月号

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