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小説

指先に海を

彼女にとっての海とは何なのか。

 デビュー四年目になる作家の中原美花は、三十歳になるのを記念して新作を書いてください、と、処女作を出版してくれた会社から依頼されています。その内容を考えていた彼女は、海を物語の中心に置いた連作を書こうと思いつきます。女性同士が作る愛や恋の関係を主題にした作品を書く彼女は、ひとりの女性のいくつかの物語が微妙に重なり連結する物語を想起し、しかし、自分は海との具体的な関係を一切持ってないことに思い至ります。彼女にとっての海とは何なのか、この短い小説は、作家と主題と体験の細やかな関係を描き出します。

底本:『NALU』70号 二〇〇九年五月

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