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小説

九月一日のアイスキャンディ

思い出が色褪せて過去になっていくと同時に、色彩は鮮やかになっていく不思議。

 父の死後、実家の食堂を引き継いだ西本理恵子は、四十歳になります。休日、サーモスにいっぱい入れたコーヒーを飲みながら車を走らせる彼女は、食堂に来てくれた高校時代の同級生と話したことから、大学時代、彼女ともう一人の友人と三人で、海の上の浮き島で食べたアイスキャンディのことを回想します。思い出が色褪せて過去になっていくと同時に、色彩は鮮やかになっていく不思議ついて、彼女はそれを受けとめています。同じ挿話を扱った短編小説「アイス・キャンディに西瓜そしてココア」同様の、確定した過去へのレクイエムのような物語です。

底本:『NALU』69号 二〇〇九年三月

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