夜までに五篇の詩を書かなければならない、と、彼は考えています。〆切は今夜。やや遅く起きた彼は、昼食兼用の朝食を食べて、ヴェランダに面した窓から外を見て、その景色から詩を書き始めるのはどうかと考えますが、その風景から実際に詩が生まれたことは一度もありません。そこに、美砂子という女性から、コーヒーを飲みながら雑談しないかという誘いの電話がかかってきます。彼は、彼女に「今日の君の色は何色だろうか」と尋ねます。その答えから、彼女に会うまでに彼は詩の前半を手に入れます。そして、この物語は詩が生まれる瞬間を描いています。
底本:『NALU』62号 二〇〇八年一月