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小説

あの海の思い出

そこに海が見えませんか?

 写真家の「僕」は、ある雑誌から依頼された「海の思い出」という短いエッセイに何を書こうかと考えています。文章に自分が撮影した写真を一枚添える、そういう仕事です。彼の思い出の中には、「あの海」の思い出があるのですが、それは「あの海」であって、そこには、かつて付き合っていた、三歳年上のモデルをやっていた彼女についての思い出が貼り付いています。だから、それは海の思い出ではないのです。この、とても短い小説の中にも、片岡義男が描く男女の姿がくっきりとした輪郭を持って立ち上がります。そこに海が見えませんか?

底本:『NALU』67号 二〇〇八年十一月

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