海が受けとめてくれる
片岡義男が書くからこその、作家のリアルがここにあります。
多分、チャンスやきっかけというものは、ほんの偶然で不意に訪れるもので、それを受ける気になるかどうかで、その後が大きく変わっていくものなのでしょう。この『海が受けとめてくれる』という短い小説は、その瞬間と、それを受けることができる彼女という存在を描いたものなのでしょう。チャンスはこんな風に、ちょっと尻込みするような、自分に出来るかどうか分からない形でやってくるものだというのは、多分、正しくて、無理すれば出来そうという顔をしてやってくるのは罠だったりするのがフリーランスの世界。それを誰よりも分かっている片岡義男が書くからこその、作家のリ…
底本:『NALU』59号 二〇〇七年七月
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