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小説

トスカーナの赤だった

記憶の繋がりは、様々なビジュアルを結びつけ、そうして映像が色彩を呼ぶ。

商業誌ではなく、かつて写真を撮った女性からの「もしプリントがいまもお手もとにあるなら、一枚でいいですから、私宛に送っていただけませんか」というものです。写真家である主人公は当然、仕事以外にも沢山の写真を撮っていて、それらは年代別に箱に仕舞われているのですが、そこから一枚だけを見つけるのは大仕事なのです。その写真を撮った時の事を思い出すと、そこには、トスカーナの赤の記憶が残っていました。記憶の繋がりは、様々なビジュアルを結びつけます。そうして映像が色彩を呼ぶのです。

底本:『NALU』56号 二〇〇七年一月

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