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小説

私は海岸の白い砂

「整理とは反省だ」と思いながら、文庫本を抜き出し、整理を始める。

 二つの壁に立っている六つのスチール本棚を、間もなく四十六歳になる彼は、整理しなければと思っていました。本棚の中にある沢山の文庫本を見て、彼は「自分は何をどのように読んだのか」と考えます。「整理とは反省だ」と思いながら、文庫本を抜き出し、整理を始めることにします。抜き出しては手で持った二十冊ほどの本の中に、彼は買った覚えも読んだ覚えもないハイネの詩集を見つけます。何故、この本はここにあるのかと手に取ってみると、中には一枚の写真が挟まれていました。その写真が喚起する記憶は、彼が二十六歳の頃のものでした。

底本:『NALU』57号 二〇〇七年三月

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